伊能忠敬はどんな人であったか
更新 2007-08-20
伊能忠敬は、はじめて実測による日本地図を作った人として著名で、戦前は小学校の教科書に載せられ偉人とされた。
戦後、しばらく忘れられた存在であったが、井上ひさし氏が小説「四千万歩の男」を書いてから、 再び見直されつつある。
我々は、彼は偉人ではなく普通の人だったと考えている。ただ、いささか好奇心が強く、 事業に成功していたので、隠居後でも若干の資力があった。
ポケットマネーを投じ根気よく測量を継続した結果、偉大な業績を残したと云うことである。
その伊能忠敬と伊能図については、いまだに分からないことが多い。研究テーマとしては格好な歴史上の人物である。
更に加えるなら、忠敬は生涯教育の元祖のようなものである。50才から始め死の直前まで、 楽しみながら地図作りに没頭していた。
彼の生涯を調べて、その人生観を問うてみてはいかがであろう。
一方、伊能忠敬研究会と朝日新聞社・(社)日本ウオーキング協会の3者共催で
「平成の伊能忠敬 ニッポンを歩こう」をスローガンに「伊能ウオーク」が行われた。
その「伊能ウオーク」は、1999年1月25日深川を出発して、
2年かけて忠敬が測量で歩いた道筋をたどり全国津々浦々を巡り歩いた。
最終日、21世紀の幕開けとして、2001年1月1日 東京日比谷公園にゴールし、盛大な到着式が行われた。
その後、2001年7月 アメリカ議会図書館で、伊能大図206枚が発見され、
次いで、2002年8月 東京国立博物館で、原図に限りなく近い伊能小図の副本が見つかるなど、
伊能忠敬に関する話題が大きく取り上げられるようになってきた。
東京国立博物館では去る2003年10月31日から12月14日まで、
「伊能忠敬と日本図」と題して平成館の1階フロアーに、上記アメリカ議会図書館の伊能大図を敷き列べ、
13万人強の入場者があり大盛況であった。
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続いて2004年4月には神戸市立博物館、仙台市科学館及び博物館でアメリカ伊能大図里帰りフロア展が
行われた。
7月には伊能大図全図が釧路市観光国際交流センターのフロアーに一挙に展示された。
日本全図が1フロアーに並べられたのは、これが始めての事である。
更に、札幌市中央体育館、帯広市十勝プラザ、MOA美術館(熱海市)、その他、広島市、名古屋市、新潟市、福岡市、武蔵大学(東京練馬区)
などで部分であるがフロア展が開催された。
12月4日〜23日には日本大学文理学部ホール(東京世田谷区)、
2005年1月22、23日幕張メッセアリーナ日本全図フロア展示を以て、一応展示を終了する。
以上のように伊能忠敬について関心が高まっている。それは忠敬が49才で家督を譲り、
かねて趣味としていた天文を更に探求すべく江戸に赴き、
幕府歴所に大阪より着任したばかりの高橋景保に強引に弟子入りをした。
その向学心は敬服に値するが、その結果55才から73才に至る18年間、
日本全土の測量、地図製作という大事業を成し遂げた。
忠敬が作成した地図は伊能図として、
世界でも実測による地図として貴重であり、且つ精度も非常に高く、昭和の初期まで参謀本部20万地図に
使われていた程である。
伊能忠敬については、既に多くの参考書籍が刊行されているのでこのHPでは触れない。
以下、伊能忠敬研究会の活動を通じて得られたトピックスなど、参考事項を掲載をする。
伊能忠敬の生涯を表で見よう
伊能忠敬を入門書で調べて見よう
平成15年6月13日 東京新聞朝刊
1995年にフランス中部の村の民家で発見され、96年には佐原に里帰りをして、展示をされた伊能図は、
当時は保存状態は非常に良かった。
しかし、今回伊能忠敬研究会の渡辺代表理事が5月に訪仏してひび割れや退色などでひどく破損しているのを見て愕然とした。
渡辺代表は「個人所蔵では温度・湿度管理などに限界がある。
重文級の資料なので日本の技術で補修し、美術館、博物館などで保存して欲しい」と日仏両国に呼び掛けている。
この伊能図は中図(21万6千分の一)と呼ばれ、北海道から九州まで全八枚が揃っている。
国内では東京国立博物館の国重文しかない。それと同じ手法で美しく彩色された完成度の高いもので、幕末フランス人が持ち帰ったと推測される。
是非完全な修復と保存対策が出来るよう心から願っていいる。
03年9月5日の朝日新聞夕刊の記事。
京都の日本写真印刷(株)が修復に協力の申し出があり、11月フランスからその伊能忠敬中図が届き次第、
作業に取り掛かり、2ヶ月くらいで修復する予定。
同社は修復技術では、トップクラスと言われる。先ずは胸を撫で下ろすところ。
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東京国立博物館で伊能小図発見
特報 3 東京国立博物館で伊能小図発見
平成14年8月9日日本経済新聞朝刊
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東京国立博物館所蔵の『日本国地図』は、文政4(1821)年江戸幕府に上程した「大日本沿海輿地全図」
(いわゆる「伊能図」)のうちの「小図」に限りなく近い「副本」であることが、
平成14年8月8日確認された。
この小図は、縮尺1/432、000 で、北海道、日本東部、日本西部の3枚からなる。
伊能忠敬らが副本を作る場合、原図の下に用紙を重ね目標箇所ごとに上から針を刺す針突法で地図 を作製した。
現存する神戸市立博物館、都立中央図書館、ほか所蔵の「伊能小図」は、いずれも針突法による作図ではなく、
今回発見された「小図」は針突法での作図で、最初の確認例である。
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伊能大図206枚 アメリカにあった
特報 2 伊能大図206枚 アメリカにあった
平成13年7月5日朝日新聞朝刊1面トップ記事。
伊能大図206枚 アメリカにあった
伊能図の正本は1873年の皇居火災で焼失。伊能家が政府に献納した副本も関東大地震により焼失した。
現在大図の写本は約60枚しか残っていないとされてきた。
今回渡辺一郎研究会代表がワシントンの米議会図書館を訪問して発見した。
大図は214枚であるが、今回の発見では欠番は7枚のみでほぼ全容を示すものである。
新聞では206枚発見とあるが、その後の調査で207枚あることが判った。
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1月1日から資料室HPでアメリカの大図写真58枚を一挙掲載。
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「伊能忠敬と日本図」展
特 報 東京国立博物館で 「伊能忠敬と日本図」展 開催
ーー 米国議会図書館の大図原寸複製を展示 ーー
平成15年10月31日(金)から12月14日(日)まで、東京国立博物館の平成館で「伊能忠敬と日本図」展が
開催された。
平成館1階の床面一杯には、東京付近から大阪付近までの彩色された伊能大図の原寸複製、数十枚が敷き詰められ、
その地図の上にへばりついて鑑賞する人で大変な賑わいであった。
この大図は、当伊能忠敬研究会代表渡辺一郎氏が、平成13年米国議会図書館で発見した伊能大図を複製したものであり、国土地理院の委嘱で、
伊能家七代目の伊能 洋氏を中心に、若い日本画家たちの手で彩色されたものである。
多大の人気を集め、入場者数は 132,588名に達した。
| 主な展示品は | |
1 | 昨年発見された伊能小図3枚揃い | 東京国立博物館蔵 初展示 |
2 | 伊能測量当時の老中松平信明家に伝えられた伊能忠敬中図 | 東京国立博物館蔵 |
3 | 九州第一次地域の大図 21枚 | 東京国立博物館蔵 初展示 |
| 最終版ではないが、美麗な大図 | |
4 | 長崎・佐世保大図。 | 松浦史料博物館蔵 |
| 平戸藩松浦家旧蔵品。副書あり伝来は明白 | |
5 | 礼文・利尻島図 今井八九郎作 1枚 | 東京国立博物館 |
6 | 第一次測量地域の大図 9枚 | 東京国立博物館 |
7 | 重要文化財 日本図・世界図 | |
| 唐招提寺蔵 16世紀 | |
| 国立博物館蔵 17世紀 ブラウ作 | |
| 国立科学博物館蔵 17世紀 地球儀 | |
| 他 多数 | |
8 | 伊能忠敬の測量器具、日記など | |
伊能忠敬の入門書
伊能忠敬の入門書
更に詳しくは伊能図書館へ
◎定評ある入門書
・伊能忠敬測量隊 | 渡辺一郎 編著 | 小学館 |
・伊能忠敬の地図を読む | 渡辺一郎 | 河出書房新社 |
・伊能図に学ぶ | 日本地学協会 | 朝倉書店 |
・伊能測量隊まかり通る | 渡辺一郎 |
NTT出版 |
・四千万歩の男 | 井上ひさし著 | 講談社 |
・伊能忠敬 三省堂選書39 | 小島一仁 | 三省堂 |
・伊能忠敬の歩いた日本(ちくま新書206) | 渡辺一郎 | 筑摩書房 |
・伊能忠敬 | 三枝博音 | 国土社 再刊 |
・図録「忠敬と伊能図」 | 伊能忠敬研究会編 | (株)アワ・プランニング |
・新考・伊能忠敬 | 伊藤一男 | 崙書房 (流山市) |
・伊能測量隊、東日本をゆく | 渡部健三 | 無明舎(秋田市) |
・歴史人物なぜなぜ事典17 伊能忠敬 | 栗岩英雄 | ぎょうせい |
・伊能忠敬に学ぶ五十歳からの転身 | 夏村波夫 | 日本実業出版社 |
・伊能忠敬ー歩いてつくった日本地図 | 鈴木清代春 | 岩崎書房 |
◎定評ある専門書
・伊能忠敬 | 大谷亮吉 | 岩波書店 1917 |
・伊能忠敬の科学的業績 | 保柳睦美 | 古今書院 1974 |
・「伊能図」中図の原寸複製版 | 日本国際地図学会・伊能忠敬研究会監修 | 武楊堂 |
・「最終上呈版、伊能図集成」 | 鈴木純子・渡辺一郎編 | 柏書房1999 |
・伊能忠敬 測量日記 | 佐久間達夫校訂 | 大空社 1998 |
・新説 伊能忠敬 | 佐久間達夫 | 大空社 1998 |
・伊能忠敬書状 | 千葉県史編纂審議会 | 千葉県 1973 |
・伊能忠敬測量隊 | 渡辺一郎 編著 | 小学館 |
・英国にあった伊能忠敬小図 | 渡辺一郎 | 自費出版 |
・伊能中図複製(1/2) | 東京国立博物館蔵 | 武揚堂 |
更に詳しくは伊能図書館へ
伊能忠敬記念館 案内
平成10年5月22日 開館
在来の伊能忠敬記念館は、佐原市にある伊能家の旧宅地に国費と県費の補助を受け、昭和36年落成した。 しかし、施設が古くなり、展示スペースや収蔵庫が手狭となったので、新伊能忠敬記念館が予算16億余を投じて新築された。
今や忠敬ブームが興りつつあるとき、新たな記念館がオープンするのは真に時期を得たものである。
佐原の町並みは重要伝統的建造物保存地区の選定を受けており、
新記念館は忠敬旧宅前の小野川対岸に新築され、 町屋・土蔵造りの外観は、佐原の町並みの景観によくマッチしている。
記念館の紹介
エントランスホール
最新のコントラビジョンの装置で「伊能図とランドサットから見た日本」
を見ることが出来る。
「地球の大きさを求めて」のハイビジョンも見られる。
アーチをくぐると伊能忠敬の展示がはじまる。
本展示室
忠敬の生涯を「佐原時代」「全国測量」「伊能図の完成」の3期に分けて、
その事業に関わる資料を年代順に展示。
映像では忠敬の人間性に焦点を当てて紹介する。
副展示室
世界の地図などを楽しく紹介するとともに、さまざまな企画展示をする。
所在地: 佐原市佐原イ1722−1(JR佐原駅より約1q)
規模等: 鉄筋コンクリート造 1,088.84u
開館時間: 午前9時〜午後4時30分
休館日: 月曜日・祝日の翌日・年末年始
入館料: 大人500円(450) 小中学生250円(200) ( )は15名以上の団体
駐車場: 約70台
電話: 0478-54-1118戟@ FAX 0478-54-3649
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伊能忠敬銅像が建立された
伊能忠敬銅像建立計画
伊能忠敬は第8回測量までの出発に当たっては、必ず江戸深川の富岡八幡に参詣して測量に旅立ちました。
忠敬の測量旅行とたいへん縁の深い富岡八幡の境内に、この度伊能忠敬の銅像を建立する計画が進められました。
計画は伊能忠敬測量開始200年を記念し、あわせて、伊能ウオーク日本一周踏破、測量法50周年、全国測量設計業協会連合会40周年、 土地家屋調査士制度発足50周年、などを記念し伊能忠敬像を建立したものです。
除幕式は10月20日 11時から各界代表、伊能ウオーク隊長の加藤剛などが参加し行われた。
当日は日本ウオーキング協会が、皇居前を出発し、亀島町の地図御用所跡、隠宅跡を通って銅像前に到着、
除幕式に参加した「伊能忠敬銅像建立記念ウオーク」もあり、千数百人の参加があった。
形 態 伊能忠敬が測量に出立する姿
規 模 本体 高さ 240cm程度
彫刻家 酒井 道久氏
事業主体 官公民の各団体の代表者による、「伊能忠敬銅像建立実行委員会」。
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「伊能忠敬測量隊」
「伊能忠敬測量隊」が発刊される。
伊能忠敬の環境と天文暦学、及び新史料に注力した作品。
忠敬について知識ある人を想定し、時系列にこだわらず、
テーマ別に章を立て読み易くしている。
編著 渡辺一郎
執筆者 渡辺一郎 佐久間達夫 嘉数次人
発行 小学館
定価 3300円+消費税
主な内容 320頁(カラー口絵16頁)
- 第一章 伊能忠敬の商才と資産
- 青少年時代 伊能家に婿入り 水運の佐原 村役人忠敬 伊能家の経営
- 第二章 高橋至時との出会い
- 高橋門下での勉学 忠敬の学んだ暦学 忠敬天文台 忠敬の天体観測
- 第三章 測量へのキッカケ
- 祖父景利の記録 天文暦学から測量へ 蝦夷地に向かう 桑原隆朝の肩入れ
- 第四章 私財投入から幕府事業へ
- 自費でもという決意から出立 幕府直轄事業となる
- 第五章 誤差との闘い
- システム化された丁寧な作業 遠山仮目標の法 伊能隊の天体測量
- 第六章 伊能隊の測量旅行
- 大藩・長州藩の協力 内弟子・平山郡蔵の破門 副隊長・坂部貞兵衛の死 至時・間の測量問答
- 第七章 幕府中枢の推進者は誰なのか
- 松平定信の影 堀田摂津守正敦 仙台藩医・桑原隆朝
- 第八章 人間・伊能忠敬
- 忠敬は偉人でなく普通の人 隊員の選考 妥協を認めぬ厳しさ 長女・イネを勘当
- 第九章 数奇な運命を辿った伊能図
- 伊能図とは 地図の仕立て 数奇な運命を辿った伊能図
- あとがき
- 忠敬の死 景保の慟哭と墓碑建立
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図録「忠敬と伊能図」増刷さる
図録「忠敬と伊能図」増刷さる
江戸東京博物館にて 98-04-21から開催された「伊能忠敬展」の図録として、 伊能忠敬研究会が編集したものである。
江戸東京博物館での「伊能忠敬展」が終わり売り切れたが、好評を得て増刷された。
主な内容は
- 忠敬の時代 井上ひさし
- 伊能忠敬再発見 渡辺一郎
- 伊能図とは 大・中・小図の比較
- 伊能隊の測量器具・測量作業の記録
- シーボルト事件
- 伊能測量を支えた人々
- 解説編
- 資料編
- その他 となっている。
大・中・小図の伊能図・特殊な伊能図 44点の他、江戸初期から明治に至る日本地図12点、その他測量器具など貴重な資料が、すべて美麗なカラー版で満載されている。
専門家ならずとも座右に置きたい図録である。
解説も平易で入門書として、打って付けの図録であり推奨したい。
編集 伊能忠敬研究会
編集協力 江戸東京博物館
発行 (株)アワ・プランニング
定価 2,400円+消費税120円
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「幕府天文方 伊能測量隊まかり通る」
伊能図と伊能測量の関係を縦軸に、史実にもとづく伊能隊の測量風景を横軸に、 なぜ、どうして、200年前に伊能図が出来上がったか。
筆まめの忠敬が克明にしたためた測量日記や伊能家に残る資料の解析と、 各方面に散っている伊能図を精力的に尋ね歩いて仕上げた力作。伊能ブームのキッカケともなった名著。
井上ひさしの小説「四千万歩の男」が文学なら、 この「伊能測量隊まかり通る」は 科学的な事実に基づいたもので、しかも知られざるエピソードも数多く挿入され興味津々。
図版が豊富で多少値段は高い嫌いはあるが、忠敬に関心ある人には絶好の書である。
加藤 剛 主演の演劇「伊能忠敬物語」などの原本にもなっている。
伊能忠敬研究会 代表理事 渡辺一郎著
A5版 320頁 図版豊富 NTT出版刊 税別3,800円
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