叶神社

横須賀市東浦賀2-21-25(平成22年5月3日)

東経139度43分34.63秒、北緯35度14分15.13秒に鎮座。

 この神社は浦賀湾東の海辺に面して鎮座しています。神社の裏山は明神山(標高約53m)と称してこの社の奥の院が鎮座する小山で、昔から自然のまま保護されてきたので、県指定天然記念物となっている良く保全された自然林です。
 社号標と鳥居が立つ入口を入ると、右に手水舎、社務所があり、正面石段上に社殿が建立されています。社務所奥には漁業関係の人達の身代わりとなって人々を救う 「身代わり弁天」や勝海舟縁の井戸などが見られます。
 石段左右には源頼朝公が伊豆の地より移植奉納されたと伝えられている蘇鉄があり、此の地が温暖な気候であることを示しています。社殿前には綺麗な江戸流狛犬が居ますが、授乳中の子狛や戯れる子狛が可愛い、端正で華麗な狛犬でした。
 社殿左側から、かなりきつい石段が約200段、山頂へと続いています。山頂には奥の院や東照宮、神明社等が祀られ、勝海舟断食の碑も立っています。勝海舟がアメリカへの航海前に、下の井戸で水垢離をした後、山頂で断食したと伝えられているようです。
 浦賀湾東西に鎮座する両叶神社は、その創建に色々な謂われがあるようですが、今でも関係が深く、西叶神社の「勾玉」を、東叶神社の「袋」におさめる「縁結びお守り」は、恋愛を成就したい若い女性に大もての様で、この日も沢山のお嬢さん達が参拝に来て社務所に寄って行かれました。又、拝殿前には地元テレビの記者が取材に来ていて、近頃「叶」の字をばらすと、「ロ」「ト」と読めるので、「ロトクジ」の当選を祈願する人達の間で、この社への参拝がブームになっている、と教えてくれました。世事に疎い私達は「へぇ〜」「ほぉ〜」と感心するばかりでした。

 御祭神:誉田別命(第15代応神天皇)
 祭礼日:1月1日・歳旦祭、2月3日・節分祭、2月初午の日・初午祭、2月17日・祈年祭、4月・蘇鉄まつり、5月17日・東照宮祭(柴燈護摩)、6月30日・大祓式、9月15日・例大祭、11月23日・新嘗祭、12月31日・大祓式
 境内社:奥の院、東照宮、神明社、稲荷社、身代わり弁天社、天満宮
 由緒:社伝によると、養和元年(1181)京都神護寺の僧文覚が源家の再興を発願し、石清水八幡宮を当地に勧請され、もし源氏の再興実現せし折は、永く祭祀を絶たざるべしと祈念したところに始まるとされている。
 その後、文治2年(1186)には源頼朝公が源家再興願意成就の意を込めて神号を改め、叶大明神と尊称されたと伝えられている。
 社殿に昇る石段の両脇に植えられている蘇鉄はこの時に頼朝公が縁深い伊豆の地より移植奉納されたと伝えられている。
 以上創建の意を汲んでか、その後源家の当社に対する信仰はかなり篤かったと想像される。このことは、当社に伝わる鎌倉幕府二代将軍源頼家公の銘の入った花鬘(けまん)からも容易に察せられるのである。

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社頭
入口に立つ明神鳥居 社号標
下の境内の様子
社務所奥に祀られる弁財天
勝海舟断食修行の折、使用の井戸
幕末に遣米使節の護衛艦となり、太平洋横断を成し遂げた咸臨丸の、実質的な艦長だった勝海舟が、航海前にこの井戸で水垢離をした後、山頂で断食したと伝えられています。
境内へ上がる石段の参道
石段の両脇に植えられている、源頼朝公が伊豆の地より移植奉納されたと伝えられている蘇鉄
拝殿前、建立年代不明の江戸尾流狛犬
右側の狛犬は授乳中の子狛を一匹、左の狛犬はじゃれあう二匹の子狛を連れています。右側はやや口を開き阿のように見えますし、鬣や装飾性に優れた華やかな一対の狛犬に見えますが、実は西浦賀・叶神社の阿だけ狛犬と組み合った一対…と伝えられているそうです。浦賀湾を挟んで相方が向かい合うという壮大なスケールの狛犬達ですが、この説にはやや疑問が残ります。叶神社の狛犬は天明6年(1786)建立、この頃には未だ流狛犬は完成して居らず(1800年代初頭位から見られるようになる)、この狛犬は少なくとも江戸時代後期から明治期にかけての建立と思われるので、同時期に作られた物とは思いにくいのです。でも、この地域では阿吽が異なる姿の狛犬が結構作られたりしていますから、後から作られたこの狛犬が、西浦賀・叶神社の阿だけ狛犬を意識してそのように作ったのかも知れませんね。織姫と彦星のような夢のある言い伝えで面白いですが…。
狛犬の拡大写真はこちらで
拝殿
拝殿に架かる額 拝殿内の様子
本殿
境内社:天満宮? 神饌所?
社殿左側、明神山山頂・奥の院へと続く石段参道
途中右側に見える紅い社殿は境内社:稲荷社の社殿です。
この様なかなりきつい石段が約200段、山頂へと続いています。
明神山山頂(標高約53m)・奥の院境内の様子
奥の院
境内社:神明社 境内社:東照宮
勝海舟断食の碑
叶神社の社叢林
昔から自然のまま保護されてきたので、良く保全された自然林で、木々の種類も豊富です。特にウバメカシの自生は県内でもこの明神山と城ヶ島だけでここが分布の北限とされています。この学術的に貴重な明神山は県指定天然記念物となっています。
社殿前から境内入口を望む
浦賀湾越しに対岸の久里浜方面が良く見えます。
絵馬
浦賀湾越しに、対岸に鎮座する西叶神社が望めます。