鞍掛神社

佐野市戸室町(平成17年9月26日)

【狛見倶楽部 栃木県佐野支部 クマちゃん通信員より】
 本殿の三方には、彩色された装飾彫刻が施されています。テーマは郷土の英雄、藤原秀郷(俵藤太)の活躍シーンです。狛犬は、寛政三年の文字がはっきり読めました。それから、狛犬に彩色されたような赤が残っていたのですが、これは悪戯なのでしょうか。

この神社は東武佐野線・多田駅の北西約2km、201号線・戸室神社前バス停近くに鎮座しています。創建は文治2年(1160)の勧請ということです。鞍掛神社というと大友皇子をお祀りする滋賀県の大津が有名ですが、ここの主祭神は鵜草葺不合命(ウガヤフキアエズノカミ)という、普通では絶対に読めないお名前の神様です。日本神話に登場する神様のお名前の付け方は、面白いというか安直というか、知っていればわかりやすいのですが、この神様は父は火遠理命、母は海神の娘、豊玉毘売命で、初代神武天皇の父にあたられます。母である豊玉毘売命が出産の折に、鵜の羽を葺草にして浜辺に産屋をつくろうとしましたが、屋根を葺き終わらないうちに御子が誕生してしまったことからこの名がつけられたとされます。農業神で、この神様を祀る神社として有名なのは宮崎県日南市の鵜戸神社です。 又、ここには縦置きの、江戸中の見本のような良い狛犬が居ます。

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(寛政3年(1791)11月吉祥日建立)

境内入り口と奥に拝殿

綺麗に彩色されている本殿。藤原秀郷(俵藤太)による「瀬田川のムカデ退治」と思われますがここではムカデではなく龍として描かれています。この他、他面には藤原秀郷が、唐沢山にある城の井戸から竜宮城に行ったときの様子なども彫られているようです。

縦置きなので阿吽とも右側からの撮影です。阿は宝珠を、吽は髷のような角を付けています。200年以上経っているのに、まだ身体の凹凸や鬣の線書き、朱の彩色の跡などはっきりと残っています。眉毛に隠れたような優しい眼でいいお顔をしています。鬣の処理の仕方も変わっていて面白く感じました。何よりも驚いたのは尻尾で、始めは後ろがスポッと欠けているのかと思いましたが、よく見ると平面に葉脈のような模様が付いています。始めからこういう構想の下に造られたのでしょう。面白く貴重な秀逸狛犬です。