伊那下(いなしも)神社

賀茂郡松崎町松崎28(平成18年10月7日)
              (平成21年2月8日再訪)

東経138度46分49.77秒、北緯34度44分46.31秒に鎮座。

 この神社は松崎市街地の南側、136号線に面して鎮座しており、付近は伊豆の長八美術館や長八記念館(浄感寺)、なまこ壁通りなど松崎観光の中心地域となっています。

 道路に面した朱の両部鳥居が目立つ入口を入ると、すぐ右手には水車が廻る趣のあるお手水舎が建ち、その右手奥には神池、その池に架かる橋を渡ると、このご神水を飲めば長生きできるという伝承が残る「神明水」が湧いています。目を転じると正面には階段上に境内、その境内には天然記念物に指定された大銀杏が、ひときわ存在感を誇示するように聳えています。境内正面には目にも鮮やかな朱色の拝殿がたち、その拝殿内には石垣が組まれ、威厳に満ちた石造の神殿狛犬が、見事な彫刻の施された本殿をお守りしています。境内右側には松崎護国神社が祀られ、社務所内では御神宝類を拝観させて頂けます。

 平安時代に創建された式内社で、産業と航海の神を祭る松崎の産土神です。伝承によると、その昔、社殿の建つ場所には大きな滝壷があり、2匹の龍が住んでいたといいます。境内に聳える樹齢1000年の大銀杏は海運関係の人々の航海の目印となり、無事港に到着した海運関係者は神様に感謝し、水を飲んで力を蓄え、その後の旅の安全を祈願したといわれています。また源頼朝はじめ多くの武士たちからも崇拝されてきました。御祭神は彦火火出見尊、住吉三柱大神です。

神社入口の両部鳥居 社号標
参道の様子
お手水には水車が廻っていました。
趣のある風情です。
境内への階段
目にも鮮やかな朱の拝殿
拝殿内の様子
本殿正面
本殿前、石造の神殿狛犬。
阿には角が、吽には宝珠がついています。
威厳に満ちた彫りの良い狛犬ですが、拝殿内は暗く尚かつ遠いので写りが今一です。ごめんなさい。
狛犬の拡大写真はこちらで
本殿鞘堂
「松崎 護国神社」社号標 境内社・松崎護国神社拝殿
松崎護国神社本殿
神楽殿 尊庭
御神水汲み取り口への神橋 御神水「神明水」

琉球畳表之碑 那賀川河川敷に群生する琉球藺草
境内右側にある神池
県の天然記念物指定・ご神木、大イチョウ
樹齢1000年余、周囲7m、高さ20mで、かつては松崎沖を行く船の目印となっていました。


長八記念館(浄感寺)
伊那下神社の対面にあり、漆喰の名工、伊豆の長八こと入江長八が、
幼き頃寺子屋でお世話になったお礼にと、江戸にて修行後にこの地に帰り、
天井画や壁画等多数の作品を残しています。
浄感寺本堂の木鼻狛犬と象。頭貫には鳥が彫刻されています。
欄間には見事な彫りの狛犬の親子が戯れていました。


この神社では社務所内の御神宝類を開放していて無料で拝観させてくれます。
入江長八作 神功皇后と武内宿禰人形
西伊豆の中心として栄えてきた港町・松崎らしく、絵馬は船関係のものが多いようです。
大小二頭の狛犬、親子でしょうか。親狛犬の後ろ足で耳を掻く姿がユーモラスです。


漆喰の名工、伊豆の長八を輩出した土地としても知られている松崎の町には、
その技と伝統を伝えるナマコ壁を備えた町屋や土蔵が町内に多く残り、独特の景観を見せています。
現代に於いても、那賀川に架かる橋の欄干や明治大正風の時計塔に漆喰技法を用い、
漆喰の技と伝統を継承しようという試みがなされています。下の写真はなまこ壁通りの様子と、
明治初期に呉服商家として栄えた中瀬邸の蔵の扉の漆喰画です。
なまこ壁とは、壁面に菱形の平瓦を並べて貼り、「めじ」と呼ばれるその継ぎ目に
漆喰を盛り上げて塗ったもので、本来は防火や保湿、防湿、防虫を目的に造られたものだそうです。


伊豆の長八美術館
松崎に生まれた入江長八は、江戸で狩野派の絵を学び、その才能を開花しました。
狩野派の技法と左官技術との融合によって、独自の漆喰芸術を編みだした長八の、
特に、コテを使って描いた絵画や壁画の技術は素晴らしく、見るものを非常に感動させます。
この美術館では入館時には虫眼鏡を貸してもらいその繊細な技法を余すことなく見学でき、
館内には有名な「近江のお兼」をはじめとして、約50点が展示されています。
ここでは伊豆の長八美術館内に展示されている作品の中から私の好きな作品数点を掲載しました。
私達が以前参拝した足立区千住の橋戸稲荷神社
土蔵観音開き扉の裏側の鏝絵・男狐と母子狐のレプリカ。
本物は見学できなかったので感激でした。
東京の長八作品は殆どが戦災で焼失してしまったので、貴重な逸品です。