宇留布(うるふ)神社

松江市八雲町平原(平成17年11月26日)

 この神社は松江市街地から432号線、53号線と引き続き南下していき、八雲町熊野で249号線にて西にはいり、平原農村公園で左折。100m先の二股を右にとるとすぐに右手階段上に鎮座しています。
 出雲国風土記には宇流布(うるふ)社、延喜式神名帳には宇流布神社と記されている古社で、御祭神は大山祇之命、木花咲耶姫之命、配祭神は須佐之男命、稲田比賣命、天照大御神、伊邪那美命、稲背脛命、菅原道真公です。この神社は、昔は神の坐す山・宇留山(室山)の中腹にあったといいます。現在の姿となったのは、明治39年、平原村内の三島大名神・國原神社・金多大名神の3社を、式内宇留布神社と認定された三島大明神を中心として、社地はそれまでの國原神社の社地において合祀して、社名を宇留布神社としたものです。 (式内社調査報告より)
 そしてこの神奈備山には、次のような蛇体伝説が語り伝えられています……昔、この地に容姿端麗で笛の上手な姫がおりました。その姫のもとへ、毎夜の如く男が通ってきて、その内姫は妊娠してしまいました。姫の父母が怪しんで、姫に、男の着物に麻糸を通した針を刺しておくよういいつけ、姫はその夜も通ってきた男の着物に針を刺しておきました。翌朝、その糸をたどっていくと、折原の地に至り、男が蛇男であることがわかりました。……というものです。

神社入り口 境内から入り口を振り返る
階段途中で始めに出迎えてくれる出雲丹後狛犬
2番目の出雲丹後狛犬、阿の顔半分が無くなって吽はとても寂しそうに見えます。
境内がすぐ上の、3番目にお出迎えの出雲丹後狛犬。
眉毛が眼に被さっているせいか、おとなしめで悲哀を感じさせる狛犬です。
拝殿 拝殿の額
本殿 五角形の石柱「社日」
「社日」を守る、摩耗が激しく恐竜顔になってしまった出雲丹後狛犬
境内社・荒神社

『ヨッシーの神社豆辞典』
出雲の神社巡りをしていて、あちこちの神社で「社日」と書かれた五角形の石柱を見かけました。今まで、他の地方では見かけなかったものなので、今回はこの「社日」について調べてみました。
社日(しゃにち)とは
 雑節の一つで、産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日。春と秋にあり、春のものを春社(しゅんしゃ、はるしゃ)、秋のものを秋社(しゅうしゃ、あきしゃ)ともいう。
 社日は古代中国に由来し、「社」とは土地の守護神、土の神を意味する。春分または秋分に最も近い戊(つちのえ)の日(前後同日数の場合は前の方の戊の日)が社日となる。
 この日は産土神に参拝し、春には五穀の種を供えて豊作を祈願し、秋にはその年の収獲に感謝する。また、春の社日に酒を呑むと耳が良くなるという風習があり、これを治聾酒(じろうしゅ)という。
                    (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)


ここ出雲の地では「社日」に「天照皇大神、大己貴命、稲倉魂命、埴安媛命、少彦名命」の五柱の神名が記されていました。それぞれの神の特性を記しますと、
 天照皇大神は伊勢神宮に祀られる八百万の神々の中でもトップに位置する女神で、太陽を象徴する神と民族の祖神というイメージの、二重の性格を重ねて祀られています。また、太陽の女神として大地の豊穣性を体現する母なる女神・大地母神的な性格の他に、武力・軍事力に象徴される男性的なパワーを兼ね備えている、それがあまたの男性神を押しのけて、実力ナンバーワンの日本の最高神として君臨している理由なのかもしれません。

 大己貴命は大国主命の別称で日本の神さまのなかのスーパースターです。出雲大社の縁結びの神さまで、七福神の大国様ともいわれています。出雲神話の主役で、全国の国津神の総元締みたいな存在です。少彦名神とコンビを組んで全国をめぐって国土の修理や保護、農業技術の指導、温泉開発や病気治療、医薬の普及、禁厭の法を制定、といった数々の業績を残した偉大な神です。

 稲倉魂命は秦氏の氏神で、別称宇迦之御魂神といい、稲荷神として多くの人々に信仰されています。稲荷神は今日では一般に商工業方面に霊威を発揮する神として信仰されていますが、名前に「稲」とつくように、もともとは五穀と養蚕を司る穀物神、農耕神で、稲の生産、豊穣を守護する神として崇められていました。

 埴安媛命は土の神、田畑の土壌の神、陶器の神です。伊邪那美命が火の神・迦具土神を産んだときに、火傷で苦しみながら糞をした、その糞から生まれた神といわれています。単なる土の神というだけでなく作物の実りをもたらす神であるともいえ、食物神の豊受大神と一緒に祀られている場合も多いのです。土のエネルギーを司る埴安神は、陶器の神であるとともに田畑の土壌に宿って穀物の豊作をもたらす神でもあります。

 少彦名命は国土経営の神、医薬神、酒神、温泉神といわれています。海の向こうの常世の国から光り輝きながらやってきた小人神で、御伽草子の一寸法師などの「小さ子」のルーツとされています。その人気の秘密は、小人神でありながら国造りという大きな仕事を成し遂げるという、サイズとスケールの関係の飛躍性にある。さらにその性格は明るく、いたずら者でユーモラス。しかも豊かな技術や知識と優れた知恵を備えている。力ではなく、持ち前の知恵を働かせて困難を見事に克服してみせるという独特なヒーロー性も見逃せません。こんな少彦名神が大国主命をパートナーとして行った一番の仕事は、全国の国造り、山造り、島造りなどの国土開発事業や農業技術の指導普及です。……(八百万の神々より)……
となり、日本の社日は中国から伝来したものを、稲作が開始される春と収穫を迎える秋とに、田の神信仰として受け入れたもので、社日で祀られている神様達も全て何らかの形で農業と関係する神様ばかりです。