天津・久保田神社

加賀郡吉備中央町細田1372(平成21年8月20日)

東経133度47分16.67秒、北緯34度53分26.98秒に鎮座。

 この神社は372号線の細田東集会所辺りから西に入り約500m、途中に注連柱が無ければ神社へ続く道とは思えないような山の中の道路を入っていきます。神社の入口にも鳥居や社号標があるわけでもなく、周辺には他に建物がないのと、石段上に狛犬らしき姿が見えるのとで神社かな?と思い、車から降りたのです。
 神社参拝に際して何の予備知識も持たない私達は、石段脇に奉納された狸を見て「何で岡山なのに信楽の狸が奉納されているの?」と不思議に感じたり、備前の狛犬(と思っていました)を見て、「変わっているな〜。」と嬉しく思い、又、本殿後ろの穴は「狐穴なのだろう。」と嘗てに解釈していました。でも、所謂霊感とかの類は全然無い私達でも、「何か摩訶不思議な変わった神社だなぁ〜…。」という感じはしていました。
 帰ってこの社の由緒などを調べていたら、神社で感じた摩訶不思議な感覚、謎は解けました。この社・久保田神社は「魔法宮」とも呼ばれ、バテレン妖術を極めたキュウモウ狸(魔法様)という狸の子供の狸を祀った神社なのだそうです。
 吉備中央町円城・火雷神社に伝わる「キュウモウ狸」の伝承とは「昔、南蛮船でキリスト教の宣教師が大勢渡来した時、キュウモウという古狸がそれに混じってやってきたという。
 キュウモウ狸は、日本中を放浪したすえ、岡山の廃坑となった銅山の坑道に棲みついた。月夜の晩に牛鍬をの先を叩きながら、「サンヤン、サンヤン」といって踊りまわっていたそうです。
 キュウモウ狸は、人間に化けるのがうまく、村人の田植えや田の草取りを姉さんかぶりで手伝ったり、盆踊りの時には奴姿でいっしょに踊りまわっていた。正体がばれると「すまん、すまん」と言いながら逃げだしました。
 また、いたずらが大変好きで、人家に入っては悪いことばかりしていました。困った人々は、キュウモウ狸のいたずらではないかと円城寺の和尚に狸退散の祈願をしてもらったところ、キュウモウは狸の姿に戻ってしまい、「これからは牛馬の難儀を助け、火難・盗難を告げ、善家一司を守りますから助けてください」と涙を流して頼みました。
 翌朝、境内には大きなしめ縄が張ってあり、それきりキュウモウ狸はきえていなくなりました。村人はそれからこの神社を「魔法様」と呼び、牛馬の守護神として祭ったと云い伝えられています。」(「狸めぐり」より)
 そしてキュウモウ狸と土地の狢が結婚し、その子供がこの社・久保田神社の魔法様になったといいます。(「狸めぐり」より)
 狸は愛嬌者として知られ、昔から人間との関わりが深かった動物ですが、伝承でもどことなく憎めない存在のようですね。

参道入口の注連柱
社頭
境内入口の石段左右に奉納されている信楽焼の狸ちゃん達です。
境内入口にいる昭和2年生まれの狛狸
この社の御祭神・キュウモウ狸さんを模ったものでしょうか?備前焼のようです。左右共に口を閉じ眉毛が太く高く、鼻筋が通っているのは外来種の血を引く狸だからでしょうか?(Q:狸も国によって種が違いましたっけ? A:いいえ哺乳綱ネコ目イヌ科タヌキ属は本種のみでタヌキ属を形成しています。)
狛狸の拡大写真はこちらで
(昭和2年(1927)建立)
拝殿
本殿
本殿後ろ側に造られた小さな社殿と狸穴
境内社:御崎神社大神、天津神社、龍王宮大神 末社