奈良市横井1-677(平成23年1月5日)
東経135度50分16.87秒、北緯34度39分8.13秒に鎮座。
この神社は式内社・穴吹神社に比定されている古社で、JR桜井線の京終駅と帯解駅の中間あたり、169号線の東に鎮座しています。
入口には大きな灯籠と真新しい鳥居の奥に真っ直ぐな参道が付けられ、こんもりとした杜(いくりのもり)が見え、参道脇に「妹が家に 伊久里の杜の 藤の花 今来む春も 常かくし見む」と刻まれた万葉歌碑があります。
境内入口には屋根付きの両部鳥居が立ち、拝殿は入口から見ると横向きに見えます。瑞垣内の本殿は春日造四社連棟で「伊栗社、穴栗社、青榊社、辛榊社」と呼ばれていますが、平安末期にこの社から春日大社境内にも勧請されている模様です。又、境内と参道に三社の境内社が祀られ、拝殿と本殿の間に素晴らしい狛犬がいます。
御祭神:太玉命、高御産霊尊、青和幣、白和幣
祭礼日:10月9日
境内社:厳島神社、稲荷神社、神武天皇社
由緒:御祭神 伊栗社(太玉命)、穴栗社(高御産霊尊)、青榊社(青和幣)、辛榊社(白和幣)
この神社の鎮座する地は、古く「日本書紀」景行天皇(第12代)の条に、「春日穴咋邑」と出ているところです。神社の名を穴吹・穴次と書くものもありますが、春日大社の記録によると、平安時代に、この地から穴栗・井栗の神が春日大社に勧請(分霊)されたと書かれています。境内にある元禄4年(1691)建立の社号標石にも「穴栗四社大明神』とあり、穴栗は古くからの呼び名です。
現在、穴栗神社は、横井東町の氏子がお祀りしています。
「萬葉集」に
妹が家に 伊久里の杜の 藤の花 今来む春も 常かくし見む
−高安 王−(巻17−3952)
と詠まれている「伊久里の杜』は、井栗の神を祀っていた、この地です。
歌は、天平18年(746)8月7日に、越中守大伴家持の館での宴の場で、玄勝というお坊さんが伝誦したものです。作者の高安 王(大原高安)は、天武天皇の皇子長親王の孫にあたり、奈良の都の人です。
「恋しい人の家に通っていく伊久里の杜に咲く藤の花よ、まためぐってくる春にも、いつもこのように眺めていたいものだ」と詠んでいる作者は、藤の花の咲くころ、このあたりを通って、恋しい人のもとを訪ねたのでしょう。
境内の萬葉歌碑は、平成10年5月に、平城萬葉教室と横井東町自治会の協力によって建立されました。
社頭 |
参道の様子 |
境内入口 |
参道に祀られる境内社 | 万葉歌碑 「妹が家に 伊久里の杜の 藤の花 今来む春も 常かくし見む |
境内入口に立つ屋根付きの両部鳥居 |
境内の様子 |
割拝殿 |
割拝殿から見る瑞垣と鳥居・狛犬 |
割拝殿と本殿の間にいる大正9年生まれの狛犬 端整な顔立ちで、彫りが丁寧なとても良い狛犬です。この辺りは浪速狛犬の生息地かと思っていましたが、尾の形が異なっています。 狛犬の拡大写真はこちらで |
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(大正9年(1920)2月吉日建立) |
春日造四社連棟の本殿 右から主神の太玉命を祀る「伊栗社」、高御産霊神を祀る「穴栗社」、 青和幣を祀る「青榊社」、白和幣を祀る「辛榊社」となります。 |
四社連棟の本殿を繋いでいる壁面に書かれた素敵な日本画 |
境内社 | 境内社 |