荒脛巾(あらはばき)神社

多賀城市市川奏社(平成19年7月22日)

 この神社は陸奥総社宮の南東約300mに鎮座しています。道路端に社号標「荒はばき神社」が建っているので入っていくと、確かに「荒脛巾神社」の扁額の架かった白木鳥居が建っていますが、その奥は明らかに個人宅のお庭となっています。入るのを躊躇していると、お庭にいらしたその家の方が「どうぞお参り下さい。」と声をかけてくださったので、やっと遠慮無く参拝させて頂きました。お庭の奥には左から太子堂?、荒脛巾神社、養蚕神社の三社殿が並んで祀られていました。荒脛巾神社には頭貫に架かる「荒脛巾社」の額の後ろに隠れるように、社殿に直に「道祖神」の額が掲げられており、明らかに道祖神と同神として祀られていることを伺わせます。又社前には多数の履物と金精様の奉納があり、旅の道中無事を祈る神、腰から下の病に効験がある神として、民間信仰が篤いことを証明しています。又多数の鋏も奉納されており、これは「病の根を切る」ということから奉納されているようです。

 御祭神は荒脛神で、創建は不詳ですが、陸奥国鎮守の多賀城の左隅に総社宮と相対するかたちで鎮座しています。多賀城の外縁にあることから、外敵退散を目的として置かれたとされ、江戸時代には伊達家から社領が寄進されるなど由緒深い神社です。
 「アラハバキ」とは、青森地方を中心に信仰されてきた荒吐神のことで、東北地方で勢力を張っていた安倍氏が一族の守神としていた神です。宇宙、自然、生命など森羅万象に神威を示す神として現代においても広く信仰されており、谷川健一さんは
「もともと土地の精霊であり、地主神であったものが、後来の神にその地位を奪われ、主客を転倒されて客人神扱いを受けたもの。
もともとサエの神である。外来の邪霊を撃退するためにおかれた門神である。
客人神としての性格と、門神としての性格の合わさったものが門客人神である。
主神となった後来の神のために、侵入する邪霊を撃退する役目をもつ神である。」と定義されています。
(謎の神 アラハバキ参照)

社号標「荒はばき神社」 神社入口
中央に建つ荒脛巾神社鞘堂
荒脛巾神社社殿

頭貫に架かる「荒脛巾社」の額と
それに隠れるように社殿に直に架かっている「道祖神」の額
道祖神 荒脛巾社前に置かれた「水金神」碑
境内一番左に居られる仏様 境内左に建つ聖徳太子碑と太子堂?
境内右側に建つ養蚕神社
二荒神社碑など