三熊野神社

花巻市東和町北成島5区1(平成22年8月20日)

東経141度12分3.73秒、北緯39度21分46秒に鎮座。

 この神社は猿ヶ石川北岸の山上に鎮座しています。284号線に参道入口があり、嘗てはここから徒歩で長い石段を上がっていったのでしょうが、現在の参拝者は殆どが車で登ってきているようです。
 神社の入口には「泣き相撲の宮三熊野神社表参道 木造日本一毘沙門堂入口」の看板があり、鳥居の左右には「三熊野神社」「毘沙門堂」の社号標が立っています。こんなに堂々と神仏混淆のままの姿が残されているとは、岩手県は規制が緩かったのでしょうか?
 二の鳥居を潜ると参道には総合案内所があり杖も置かれています。三の鳥居を潜り少し行くと参道は突き当たり、右に行くと毘沙門堂。左に行くと三熊野神社境内となります。私たちはもちろん左への道をとり、グルッと回り込むと境内正面に出ます。境内参道脇にはご神木の切り株や趣ある手水が置かれ、正面の拝殿は入母屋造り、重厚なお寺のお堂のような造りで、本殿は向拝流棟造りで県の有形文化財に指定されているそうです。
 社殿左側はお爺杉を中心とした鎮守の杜。朱の両部鳥居を潜ると左側に山神社が祀られ、中央上部に「日本最古のもの・お爺杉」と案内板が立つ、推定樹齢・1000年と伝わる大杉が感動的な姿を見せて聳えています。
 社殿右には市指定無形民俗文化財・十二番角力式(泣き相撲)と言われる奇祭が行われる泣き相撲大会の土俵があり、その後方には境内社や石碑が沢山祀られています。
 尚も右に進むと、多聞天堂、最奥に毘沙門堂が建立され、風化が著しいはじめ狛犬が健気な姿を見せてくれます。
 地図では神社の規模までは書かれていないので、参拝して初めてその神社の大きさや歴史、景観などに触れることができます。この社も一般的な熊野神社に詣でた筈でしたが、神仏混淆が色濃く残る非常に大規模な神社で、山容や境内の様子、社殿の造りなど、感動がひとしおでした。

 御祭神:伊弉冉命、事解男命、速玉男命
 祭礼日:9月19日
 境内社:山神社等
 由緒:言い伝えによると、延暦年中(782〜806)征夷大将軍坂上田村麻呂がエミシ征伐の時、この地で紀伊の熊野三山の神威を崇び熊野の三神を勧請し、三熊野神社を建立したと伝えられています。
 康平5年(1062)に源義家が阿倍貞任を追撃しここに立ち寄った時、熊野神社に鏑矢を収めて勝利祈願をしたところ阿倍氏を破り奥羽を平定する事ができたと伝えられています。
 中世には、和賀領主より社領七十石を寄進され、元和4年(1618)に南部利直公より社領二十三石をいただいています。
 県内では数少ない古代建築様式をもつ建造物であることから昭和54年に県の有形文化財に指定されています。

 ここで行われる泣き相撲は、古くから三熊野神社の特殊神事で、正式には9月の例祭に行う十二番角力の式を言います。
 言い伝えによると、延暦年中(782〜806)坂上田村麻呂がこの地で部下に相撲を取らせたのが始まりと伝えられています。その後、猿ケ石川を境とした南・北成島の青年(22歳)による相撲は、勝利した方に豊作をもたらすという占いが流血の争いとなったことから宝永3年(1706)神社氏子の長男で、数え2歳の幼児による泣き相撲にかわり、南北にわかれ6組で取り組みを行い、先に泣き出した方が負けと決められています。
 現在は幼児成長と豊作を祈る行事として続けられています。江戸時代から続く民族行事であることから平成5年に町の無形民俗文化財に指定されています。  

284号線の表参道入口
表参道入口に立つ一の台輪鳥居
自動車道脇の歩行者用石段参道

社頭
社号標
「熊野神社」
神社入り口に立つ二の台輪鳥居
参道途中に立つ三の両部鳥居
参道の様子
参道はここで突き当たり、右に行くと毘沙門堂。
左に行くと三熊野神社境内となります。
三熊野神社境内へと続く参道
境内入り口
御神水と手水 ご神木の切り株
拝殿
本殿
社殿左側、山神社やお爺杉への入口に立つ両部鳥居
お爺杉を中心とした鎮守の杜
境内社:山神社
ご神木 日本最古のもの お爺杉
樹高・35m、目通り幹囲・5.9m、推定樹齢・1000年と伝う

泣き相撲大会の土俵
出羽三山 出羽三山
天照皇大神 南昌山
境内社 境内社
境内社 多聞天堂

毘沙門堂への参道 毘沙門堂案内板と石仏
毘沙門堂境内の様子
毘沙門堂を護るはじめ狛犬
建立年代は不明ですが、かなり古いのでしょうか?お腹の下に刳り抜きは見られず、顔の表情も殆ど分からないほど風化が進んでいます。鬣は短く、尾や脇毛の渦模様が見えます。
狛犬の拡大写真はこちらで
国指定重要文化財・毘沙門堂
寄棟造り、鉄板葺のやや大型の三間堂で廻り縁と向拝付き。室町時代後期に建立、延宝元年(1673)改修。
毘沙門堂の様子

神社入り口付近から284号線の表参道入口方面を振り返る