八幡宮

前橋市青梨子町805 (平成23年5月28日)

東経139度0分40.58秒、北緯36度24分53.55秒に鎮座。

この神社は、上越線・群馬総社駅の西3km程の辺り、前橋西高のすぐ南側に鎮座しております。八幡宮ですが、何故か参道は梅の並木となっており梅の谷間を抜けて行くとやがて境内となります。

井戸八幡宮
今から約四百数年の昔(一説にほ永禄三年四月のことともいう)ある春の日のこと、上野国ここ青梨子の野に、突然、地底から雷鳴のようなものが起こり、それが大きな竜巻をともなって、天に昇りました。砂塵は、もうもうと野をおおい、風が渦となって吹き荒れ、人々は目をあけていることが、できませんでした。村人たちは、立ち木や家の柱にしがみつきこの竜巻をさけ、ただその静まりをまっていました。しばらくして、竜巻が去ると、また、なにごともなかったような、うららかな春の陽ざしが、かえってきました。
付人たちは、恐る恐る野に出てみて驚きました。それは、村はずれの草むらに、キリでもまれたように深い井戸が現れていたからです。覗いてみると底には澄んだ水が、たたえられています。人々は不思議に思い、しばらくはこの井戸に近寄ることもしませんでした。
あるとき、一人の盲人が、この井戸の水で顔を法ったところ、たちどころに目が開きました。これを知った村人たちは、びっくりして、このことを時の領主に申し出ました。そして、この井戸の上に一つの社を建て三月二十五日を例祭日として、祭ることにしました。一説によりますと、御神体は品陀和気命(ほんだわけのみこと)ともいわれています。
時が移り、一人の男がこの社のお守り役として、住みつくようになりました。眼病に効く水の評判はしだいに高まり「御水もらい」には、近郊の村はもとより、遠く武州(埼玉・東京)や甲州(山梨)からも、たくさんの参拝人が訪れたといいます。この噂が、時の城主安藤対馬守の耳にはいり、その庇護(ひご)のもとで社殿が再建されました。
もともと、この青梨子は、総社町高井と同村であった関係から、以来、祭礼には高井から山車がのぼってきたといいます。星霜移り、いつかお守りの人も死に絶え、訪れる人もなくなりました。拝殿の壁は落ち雨もりがひどくなり、そのまま何年かたちました。これを憂えた青梨子町の田村庄平、関根源十郎、桜井庄五郎さんら十六人が世話人となり、明治二十年三月、時の知事佐藤与三氏に申し出て、二円の寄付金が下賜され、これをもとに村内から寄付をつのり、修築を果たすことができたといわれます。
それから、さらに八十年余りたった一昨年地元の氏子たちによって、本殿の修理が行なわれました。いままで、この中に白蛇が棲んでいるとか、覗くと目がつぶれる、という言い伝えから、長い間、だれ一人見ることのなかったこの井戸が、このとき、はじめて開かれました。
近くに住む坂部定市さんは、「深い井戸でしたよ、おおよそ二十尺(六メートルほど)ぐらいあるかなあ、その下の方が水で、その深さは見当がつきません。とても人間の掘ったものとは思われないような、岩と岩とのくり抜きでして、ただみんな覗きましたが、だれも目はつぶれませんでしたよ」といっています。
修築後の本殿は、ブロックで囲われ、昔の面影はありません。井戸は再びこの本殿の下になってしまい人の目にふれることもなくなってしまいました。
前橋=桃井線のバスで“八幡前"で下車、歩いて二分ほどのところにあるこの”井戸八幡宮"は、訪れる人とてなく、いま、数十本の梅と数本の杉や松の梢が、ひょうひょうと風に鳴るのみです。そして境内のかたわらさむざむとした桑畑の中には銘もさだかでない、お守りのものといわれる墓石が、いまでも、ひっそりと残されているばかりです。
(昭和四十五年三月一日号掲載)

八幡様の伝説について
八幡様は、身近な神社にもかかわらず、多くの方はその伝説を知らないと思われます。折にふれ言い伝えなど聞いた子と事はあると思いますが、氏子の坂部幸一さんから「前橋の伝説百話」という本があり、中に八幡様の伝説が書かれていると教えて頂きました。
坂部さんの先代が取材に応じて作られたとの事で、坂部さん方に寄贈され保管されていたものを見せていただき、みなさんにお伝え出来ることとなりました。
「前橋の伝説百話」は、昭和四十九年八月二十日、前橋市観光協会発行と記載され、文中末尾に(昭和四十五年三月一日号掲載)とあり取材はそのしばらく前と言う事でしよう。
記載の内容は、実際の「前橋の伝説百話」内容に一部修正を加えたものです。これは、本が出来上がり寄贈された後に先代が修正を行ったとの事で、修正した内容を記載させて頂きました。文中の永禄3年は西暦1560年、昭和45年は西暦1970年です。
このたび、氏子をはじめ関係ある多くの方々に御協力を頂き八幡様の改修を無事完了することができました。これを機会により多くの方々に八幡様伝説を知って頂き、後々まで伝えてもらい、八幡様を大切にして頂きたいと思います。
井戸八幡宮改修実行委員会 原文はこちら。

参道入口

梅の木が並ぶ参道。

拝殿

本殿覆屋


石仏や石碑

社額や石祠

富士山