境の明神

白河市明神(平成16年5月9日)

 白河市街地から南へ数キロくだった。道は、旧陸羽街道をひろげた国道294号である。白坂という旧宿場の村にいたる。そこからゆるやかな勾配をのぼると、低い峠の中どころに、「境の明神」 とよばれる幽邃な場所がある。ここが関跡であるかどうかはべつとして、江戸時代、参勤交代の大名行列が通る道だったのである。まわりは杉木立で、蒼古としている。 路傍の高い所に、小ぶりな神社がある。「境の明神」と掲示されている。 なるほど、境としか言いようがない。関東のほうへは、勾配がさがる。境の明神の場所が、道路として最高所で、雨が路面にふれば水は両側にふりわけられるにちがいない。(街道を行くより)
 この記述から何年経ったか知れないが、この辺りは未だに司馬遼太郎が書き記したそのままの光景が残っていた。時の流れに左右されないこんな場所に佇むと、都会の喧噪に押し流される毎日を送っている身としては、非常に癒される心持ちになる。

神社入口、台輪鳥居

社殿

垂れ眉と背中にへばり付いた鬣、直角三角形の準江戸狛犬

トイ面にある境神社

丸々ポッチャリ型、彫りの浅い準江戸狛犬

(安政3(1856)年4月建立)