高住神社

田川郡添田町英彦山27(平成22年4月3日)

東経130度56分7.06秒、北緯33度28分51.8秒に鎮座。

 この神社は500号線を英彦山神宮銅の鳥居から更に5kmほど東に入った英彦山北東中腹に鎮座しています。江戸時代までは豊前坊と呼ばれ、明治の神仏分離令により現社名となり、英彦山神宮の摂社となっているようです。
 下界とは違ってかなり標高も高いのでしょう、4月だというのにこの日の最低気温は3度だったという事です。私達はこの日AM4:30起きで5:00北九州市のホテルを出発。先ずこの社を目指して来たので、羽毛のコートで丁度良い案配でした。
 駐車場に車を置き、未だ柔らかな光の中を神社入口に向かうと、木々も未だ芽吹いたばかりという状態で、薄緑のグラデーションが陽に映えて、とても綺麗でした。けれど一の鳥居を潜り参道に足を踏み入れると、空気はがらっと変わります。鬱蒼とした杉等の木々に囲まれ、大小無数の苔むした岩がゴロゴロとした参道周囲、気温としての温度とは別に、ひんやりと澄んだ空気が感じられ、身も引き締まる思い。森閑とした山の姿は、天狗伝説にふさわしい神寂びた雰囲気が漂っています。
 そんな参道の右側には御神水の湧き出でる今川水源、役行者像、左には不動堂等が見られ、境内手前には推定樹齢・約850〜900年の老杉・天狗杉が天高く聳えています。
 境内にはいると目に付くのが社殿後ろに聳える天狗岩。この岩の上部には、烏天狗の鼻から木が生えているように見える部分がありました。妻入り唐破風付きの大きな拝殿の後ろには、岩の中にめり込むように本殿が建立されています。又、社殿右の社務所脇には大天狗の霊水・豊前坊龍神が祀られ、社殿前には二組の素敵な狛犬がいました。
 素晴らしい神社巡りが出来た今回の旅の中でも、神社周辺の環境や狛犬、社務所で伺ったお話など、私にとっては一番印象深かった神社でしたが、その感動が写真や私のコメントで旨く伝えることが出来ているようには思えません。これを御覧になっている皆さんには、是非ご自分の目で、耳で、肌で、五感全体で、この社の良さを感じていただきたく思います。

 御祭神:豊日別命(豊日別国魂神)、天照大御神、天火明命(天照国照彦火明之命)、火須勢理命(火燗之命)、少名毘古都命
 祭礼日:春季大祭・3月春分の日、夏越大祭・7月土用丑の日、神幸大祭・9月第二土・日曜日、秋季大祭・秋の採燈護摩供・11月3日
 境内社:豊前坊龍神
 由緒:社伝によりますと、御祭神は豊前豊後の国の守護神としてもと鷹巣山に祀られ、遠く継体天皇の御代(約1500年前)藤原恒雄の御神託によって創建されたと伝えられています。人々の病苦を救い、農業や牛馬・家内安全の神として古くから崇められてきました。
 また、英彦山には豊前坊という大天狗がおり、欲深く奢りに狂った人には小天狗を飛ばせて子供をさらったり、家に火をつけるなど慈悲の鉄槌を下し、心正しく信仰する人には家来の天狗を集めて願い事を遂げさせ、其の身を守ると伝えられてきました。豊前坊大天狗は九州の天狗らの頭領で、その高い御神徳を称え、現在でも修験者たちの信仰を集めております。
 境内の石鳥居は1698年(元禄10年)、青銅の神牛は1839年(天保9年)に、ともに五穀豊穣、牛馬・家内安全を祈願して、田川郡の大庄屋六人が建てたものです。現在でも農業の神と崇敬篤く、九州一円から農業・牛馬安全を願いお参りに来られます。また火伏せの神とも知られ、火難除のお宮として名高く知られております。
 高住神社は北岳(標高1192m)登山口として季節を問わず多くの登山者で賑わい、また身のすくような断崖絶壁である望雲台から望む景色は絶景です。初夏は新緑、秋は紅葉の名所として、冬は雪山登山など一年を通じて楽しめます。
(高住神社パンフレットより)

 彦山豊前坊は、天津日子忍骨命が天下ったもので、役行者がこの山で修行した時それを祝福して出現したとされる、日本八天狗の1人に数えられる大天狗です。大天狗鞍馬山僧正坊の召喚に応えて鞍馬山に赴き、源義経に武芸を伝授したという伝説も残ります。因みに「日本八天狗」とは1、愛宕山太郎坊(京都) 2、比良山次郎坊(滋賀) 3、飯縄山飯綱三郎(長野) 4、大峰前鬼(奈良) 5、鞍馬山僧正坊(京都) 6、白峰相模坊(香川) 7、相模大山伯耆坊(神奈川) 8、英彦山豊前坊(大分) ということです。

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社頭
入口に立つ銅製の一の鳥居
参道途中に立つ元禄10年(1697)建立の二の鳥居
この朝は気温が3度という寒さ。その気温の所為では無く、参道に足を踏み入れると、静寂感の中にピリピリとした、身内が引き締まる思いが湧き上がってきます。
参道右に湧き出でる今川水源
参道右の大岩上に祀られる役行者
かって山伏達が闊歩していた修験の山らしく、引き締まった清冽な空気が漂う、参道風景です。
この様な大岩が参道脇に点在しています。古の人々が神を感じたのも、充分に肯ける雰囲気の神域でした。
参道の上の方が明るくなり、建物の影が見えてきました。
参道左に建つ不動堂
御神木・天狗杉
推定樹齢・約850〜900年の老杉で、真っ直ぐに天に伸びた姿や、苔や樹皮の様子から年代を経た威厳を感じさせます。
境内手前の参道の様子
手水舎 境内左の社殿
境内の様子
拝殿石段下にいる建立年代不明のはじめタイプの狛犬
吽には「寄進」の文字があり、阿の胸にも字らしきものは見えるのですが、残念ながら判別は出来ませんでした。吽の顔が外向きになっていて変なのですが、建立された時からこの位置に置かれていたかどうかは分からないそうです。この地域では比較的阿吽の位置が反対の置き方が多いのですが、何時の頃か他地域の置き方になぞらえて反対位置に置かれてしまったために、この様にそっぽを向く事になってしまったのか、横置きを縦置きに変えてしまったのか、神社の方もおわかりにはならないそうです。はじめとしては進化の段階にあり、彫りも深く、装飾的にも手が込んだ造りになっています。顔つきも、ぺちゃんと座った後ろ姿も、とても可愛い狛犬です。
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拝殿前にいる昭和16年生まれの狛犬
尾が長く、背中の中央まで伸び、鬣の渦が立体的です。中々整った顔立ちをしていますが、石段の上にいて上からの映像が撮りにくく、残念です。身体中に苔を生やして、年月と貫禄を覚えさせるこの年代の狛犬としてはとても良い作品です。
狛犬の拡大写真はこちらで
(昭和16年(1941)8月15日建立)
拝殿
拝殿内の様子
岩の中に入り込んだような造りの本殿
社殿後ろに聳え立つ天狗岩
天狗岩の名の由来となったのはこの部分でしょうか、烏天狗の鼻から木が生えているように見えます。 高住神社から戴いてきた烏天狗の土鈴です。我が家の玄関の外に吊され、家内安全を見守ってくれています。
境内社:大天狗の霊水 豊前坊龍神